2016年3月2日水曜日

がん告知方法のトレーニングプログラムの有用性を検討した日本のRCT

2014年7月4日 3:53
なんだか最近は医学研究というと、捏造やらお金の話ばかりですが、いろんな意味で素晴らしいと思えた研究を見つけたのでご紹介。いいっすな。


●がん告知 患者負担減に効果
(いつも思いますが、岡山ってたくさんいい研究している印象)


ちょうどちょっと前にも以下のような研究が発表されていたところでした。


●がん診断後、自殺・事故死の危険20倍に 1年以内の患者


この研究成果が、自殺を減らすことができたらよいなぁと思います。


ちなみに、元の論文はおそらくこれ
●Effect of Communication Skills Training Program for Oncologists Based on Patient Preferences for Communication When Receiving Bad News: A Randomized Controlled Trial.


やっている内容的なものは、日本語で以下で見れると思われ。


●がん医療におけるコミュニケーション・スキル  悪い知らせをどう伝えるか



この研究が素晴らしいと思う点は、欧米のやりかたをそのまま輸入するのではなく、日本に合った形にカスタムして、日本でRCTをやって論文化したところです。すごいなー&すばらしいなーと思いました。ぜひこれを根拠に、これをちゃんとやっている病院が診療報酬で優遇される(やっていないと冷遇される)ようにしてほしいものです。
 これは、内富氏が着想からここに至るまで15年くらいかかっているようです。アイディアを臨床の現場で想い付き、RCTまで持っていくことの大変さ、そして内富氏の執念を感じました。単に15年っていうだけではいまいち具体的に思い描けませんが、要するに30歳で「これをこうしたらいいんじゃないか!?」と思って、論文が出せたのが45歳ってことですからね・・・。
 そして、これが診療報酬に反映されるにはもっと月日がかかるでしょうね。最速でも次の診療報酬改定まで2年ですし、保守的なこの国でまぁ次で認められることもないでしょうから最速でも4年ってところでしょうか(15+4以上=19年以上・・)。そう考えると、1人の医師・研究者が、臨床で問題点を見出し、それを臨床研究において解決方法を証明し、それが日本全体で広く使われるのを自分が現場にいるうちに見届けるって、結構大変(無理!?)なことなんだなーと思いました。とはいうものの、内富氏のまわりに、MD疫学者がいたりすれば、その時間はかなり短縮できたんじゃないかとも思います。

さらに上記でいいなと思ったのは、上記の論文の筆頭著者が、医者ではなく心理士PhDであることです。別に臨床研究はMDだけがやるべきものではないと思います。心理士もそうですが、特にナースの人が、もっと臨床研究やってもいいと思います(やってるのを私が知らないだけかもしれませんが)アメリカでは心理士が大量に働いており、メンタルの気軽な入口化しているようですが、日本の心理業界は、業界が長年内輪もめし続けているようで、診療報酬に収載されておりません(=保険を使って心理士単独によるカウンセリングができません、精神科Dr.と一緒に働きカウンセリングしている人はいるようですがそれも全額自費)。個人的には、柔整を保険でやるなら、心理も保険でやれよーと思います(今の財政状況で追加するのはほぼ無理でしょうがね、、)。


ちなみにほめてばかりだと何なので、厳しいコメントもメモしておきます。

そもそもアブストラクトも適切な必要な内容が書かれていないと思います(例:参加医師数、患者の評価のインターバルの期間etc)
本研究は、あくまで医師の「自信」を評価したもの。患者の評価は後付けでメインではない。もちろん自殺が減るかは評価していない。
上記の研究に参加した医師は、リクルートされた153人中のわずか30人。153人とは、全て、がんセンターの医師のようです。忙しすぎてゆとりがないのか、患者さんのカウンセリングに興味がないのか、自身が評価されるのが嫌なのか、理由はわかりませんが、かなり参加率が低いです。これはこれでかなり問題だと思います。こんな状況じゃ、国立がんセンターという研究施設なのに、まともな診療および臨床研究ができるとは思えません。

RCTと言っている割に、ランダマイゼーションがそれほどうまくいっているようではなりません(N=30だしね)。患者評価においても、二群間の特性の差があるようです。患者のベースラインの情報もないようです(フォローアップ時のの基本特性のみ表示??)。
評価項目もかなり多用しており(多重検定、ボンフェローニはかけていますが)、仮説検証型の研究という感じがしません(なんかでないかなー的な印象が)。
RCTなのにサンプルサイズ計算や、RCTの事前登録IDがなさそうです(=consortはじめ標準的なRCTのやり方に準拠してない??それって根本的に・・・)。


など、臨床研究論文としては結構問題ありな印象がありました。


でもJCOってかなり有名なジャーナルだと思うのですが、こんなレベルでも掲載しちゃうの?というのが正直な感想です。トピックが良かったんでしょうかね。

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