2016年2月17日水曜日

英語 論文での、時制の使い方



<いきなりまとめ>  

 論文を書くときに、初めての人は、英語(日本語もか?)の「時制」で混乱することもあるとは思います。しかしまとめると結構シンプルで、下にまとめた通り、要は、自分(たち)が行った研究の説明や結果については過去形で、それ以外は現在 or 現在完了でOKと思います。

 

Introduction

現在 (Present)
一般的に受け入れられている事実を書くとき

例: “Smoking causes cancer.”


現在完了(Present perfect)
現在も認められている、過去の研究結果を書くとき

例: “Smoking has been shown to cause cancer.”

Methods


過去(Past)
自分が行ったこと(実験など)を書くとき

例: “We recruited 45 subjects for our study.”

Results &

Figure Legends


過去(Past)
自分が発見したことなどを書くとき

例: “We observed that the weight of…”


現在(Present)
図を参照するとき

例: “Figure 3 shows the increase in weight…”

Discussion


現在(Present)
一般的に受け入れられている事実を書くとき


現在完了(Present perfect)
現在も認められている、過去の研究結果を書くとき


過去(Past) 
自分が発見したことを書くとき

例: “We found that smoking increased the…”


現在(Present)
自分の研究結果が、当該研究分野に与える影響を書くとき

例: “These results suggest that smoking increases…”



2016年2月8日月曜日

国立大学の授業料がさらに値上がりする? >”日本共産党の畑野君枝衆院議員が昨年12月に国会でただすと、文科省は「授業料は40万円増えて93万円になる」と答えました”

うーん、いつもながら、共産党さん、指摘している点はいいのだが、重要なポイントがずれている気がする。
こういう政党の政策秘書みたいな人ももっと優秀な人がついてくれるといいのだが。


”財務省方針は、今後15年間、交付金を毎年1%削減して1948億円も削減する一方、大学の自己収入を2437億円も増やせというもので、同省は現在もこの方針を撤回していません。
 同審議会がとりまとめた昨年11月の「建議」は、国立大学に対し、数値目標は示さなかったものの「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の値上げについても議論が必要」「国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」と打ち出しました。
 自己収入増を授業料だけで賄えばどうなるのか―。日本共産党の畑野君枝衆院議員が昨年12月に国会でただすと、文科省は「授業料は40万円増えて93万円になる」と答えました。”


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-08/2016020802_01_1.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-08/2016020802_01_1.html


今私が理解している限りでは、この文章が書いているような国立大学の授業料の値上げは起こりません。
理由は、国立大学は授業料が以下のように決まっており、自由に上げることが法律上できないからです。
かりに「特別の事情があるとき」であったとしても、値上げできるのは20%(=10万円)が上限です。

共産党さんは攻めるポインをがずれていると思います。
私が考えるポイントは以下です。

1)日本の国立大学の授業料は、すでに現時点で世界的に見てもかなり高い。この点が最も重要だと思います。

2)国立大学は、独立行政法人化したといいながら、全然財政的な運営としては独立していない中で、収入が減らされ、パフォーマンス(定義は?)を上げるようにせかされている。
具体的には、収入の半分は運営交付金(=税金)でこれは完全に文科省に依存している。その運営交付金は毎年1%減っている。
また、ほかの収入を増やす主な手段(国の研究費・授業料)も、文科省・その関連財団に縛られていて、身動きが取れない。
確かにいわゆる科研費は国全体としては増えているが、大学自体の収入となる間接経費(大学が研究以外に使えるお金。人件費や設備費など)はその20%でしかない。
独法化後、事実、旧帝国大学以外の多くが、全体での収入が減っている。
民間からの研究費・委託費は、一般にはこれら(運営交付金・研究費・授業料)に比べて極めて少ない。これを頑張って取ってきて生きて行けと言われても、多く(東北大工学部のような神みたいなところを除き)が、焼け石に水である。

3)国立大学の明確なゴールの設定。それがうまく達成できていないとき(=今)は、方針の抜本的な転換(=運営交付金を毎年1%減らすのをやめる)。

4)私学にどれだけお金を交付しているのかわかりませんが、子供の数の減少に合わせて、私学を減らしたほうがいいと思います。が、これは相当難しいでしょうね。




ほかの国の大学の運営はわからんけど、日本の国立大学全体の運営は、よろしくない方向にどんどん進んでいると感じる今日この頃です。



”(授業料、入学料及び検定料の標準額等)

第二条 国立大学及び国立大学に附属して設置される学校(次条第一項に規定するものを除く。)の授業料(幼稚園(特別支援学校の幼稚部を含む。)にあっては、保育料。以下同じ。)の年額(乗船実習科(大学の教育研究組織であって、商船に関する学部の課程を履修した者で海技士の免許を受けようとするものに対し、乗船実習を行うものをいう。以下同じ。)にあっては、授業料の総額。以下同じ。)、入学料(幼稚園にあっては、入園料。以下同じ。)及び入学等に係る検定料は、次の表の第一欄に掲げる学校等の区分に応じ、授業料の年額にあっては同表の第二欄に掲げる額を、入学料にあっては同表第三欄に掲げる額を、検定料にあっては同表第四欄に掲げる額をそれぞれ標準として、国立大学法人が定める。”
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000953.html#e000000042

”(授業料等の上限額等)
第十条 国立大学法人は、国立大学及び国立大学に附属して設置される学校の授業料の年額、入学料又は入学等に係る検定料を定めようとする場合において、特別の事情があるときは、第二条第一項若しくは第三項、第三条第二項又は第四条の規定にかかわらず、これらに規定する額にそれぞれ百分の百二十を乗じて得た額を超えない範囲内において、これらを定めることができる。
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000953.html#e000000449



IELTSとTOEFLの関係について考えてみた。

時々こういう話をすることがあるので、一回思いつくことをまとめてみました。「事実」というよりは私見です。
話をシンプルにするために、TOEFL, IELTSの2つの比較で話を進めます。

●いきなりまとめ
・ 日本では大学入学でこれらのスコアを用いる話が出ています。
それも悪くはないでしょうが、むしろ学部の卒業要件に「最低スコア」のクリアを設定してもよい と思います。
「最低スコア」は大学や学部ごとに異なっていいと思いますが、いわゆるそれなりの大学は、「最低スコア」は英語圏の修士課程が要求するレベル にしていいのではと思います。 
ちなみに国立台湾大学は導入しているようです(卒業までにTOEFL iBT 80以上)

・研究をすることが目的ということになっている大学院 では、英語の文献を読み、海外の学会に出る必要があります。
ゆえに、それ相応の英語力が入学時点で必須なわけで、TOEFL, IELTSを大学院入試の足切りに使用すれば良いと思います。
入学後に、大学院教員が学生の英語の面倒を見るというよくわからないことが起きているようです が、それは大学教員の仕事ではないと理解しています。
日本にはたくさん優れた英語を教えてくれる学校があります。

●TOEFLとIELTSどちらがやりやすいか?
この2つでは明らかにIELTSの方が「やりやすい」と思います。特にspeaking。
IELTS は人との会話ですが、TOEFLはパソコンに向かって一方的にしゃべるのみ。
まぁ確かにspeakなのかもしれませんが、会話というものは、相互のやり取 りで成立しているわけで、間違っても、一方的に話すだけでは会話は成立しないと思うのですが・・・(ある意味そこらへんも英米の違いか・・・・)
speakingに限らず全体としても、単語レベルもIELTSの方が楽な気がします。

●TOEFLとIELTS(とTOEICと英検)の換算表
ネット上でも検索すればたくさん見つかります。
さまざまな「換算表」が存在します。
いろいろありますが、ホンマかいなと思います。
私の場合、IELTSが一番上に行きやすく、英語圏の大学院入学の時に求められるスコアという点でも、多くの場合IELTSの方が到達しやすいです。
各大学院ごとに、TOEFLとIELTSで異なるスコアを提示しているが、自分に合った試験で選べばいいと思います。

●利用可能性
ちなみに元々の流れは、TOEFL=アメリカ、IELTS=イギリス連邦(らしい)。
ちょっと前まではアメリカの大学院はIELTSは受け付けていなかったようですが、調べた限りでは最近ではほとんどどちらでもOKなようです。
むしろ日本国内でIELTSを受け入れてくれないところは結構あると思います。

追記:TOEFLで不正があり、英国が利用を拒否しているようです。

英国留学希望者に衝撃 ビザ申請にTOEFL、TOEIC使えなくなる


http://www.j-cast.com/2014/06/11207346.html

上記も踏まえると、IELTSに軍配が上がる気がします。


●お値段
IELTSは24000円くらいで、TOEFLは200ドル?IELTSの方が、お金が高い。超円安になれば話は別ですが。

●試験会場、回数
IELTSの方が少ない(気がする)。
こと地方都市在住としては受験するのが大変です。
仙台在住時には、IELTSの方が受けやすかった。
TOEFL@東北は、主に、秋田と会津と仙台の端っこ(+まれに盛岡)でしかやっていない。受けに行くためにホテル宿泊したりして一苦労でした。
ただ、田舎は人数が少なくアットホームな雰囲気で好きです。東京で受けたことあるけど、TOEIC並みに人がいて驚きました。

●筆記vs PC
パソコンに慣れていると、IELTSの鉛筆がきつい。特にライティング。PCにしてほしい。。


おまけ
●TOEICと英検をすっかり忘れていました。

・英検:基本的には、大学入試まで。
・TOEIC:日本の会社で必要に応じて受けるもの。

どちらも財布にやさしく、資格の意味は日本人には理解してもらえるが、日本を出るとほぼ無意味な気が・・・。

TOEICは、基礎英語力がどの程度「無い」ことを判断する材料にはなるかもしれません。
700-800を取れない人は、文法含めて基礎的な勉強が必要だと思います。
TOEICの問題集は、日本語で良質なものがリーズナブル価格で手に入るので、会話の練習と並行してTOEICの勉強をやるとよい気がします。
700-800以上取れれば、IELTSやTOEFLに取り組んでも良い気がします。
それくらい基礎学力がないと、これらの試験は受験自体が困難な気がします・・・。


★20140720追記★

中高生版TOEFL開始…実践的英語テスト続々
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140720-OYT1T50080.html

”TEAP”って何・・・?と調べる。

http://www.eiken.or.jp/teap/merit/

”TEAPは主に高校3年生を対象とした大学入試を想定して開発されております。テスト構成は日本における「大 学教育レベルにふさわしい英語力」を測るうえで適切な設計となっており、テスト内容はすべて大学教育(留学も含む)で遭遇する場面を考慮して作成されてお ります。難易度の目安としては、英検準2級〜準1級程度で、日本の高校3年生の英語を測定するのに最適なレベルとなっております。”


TOEFLやIELTSって、「確か英語圏の大学・大学院でどれくらいできそうですかね?」というための試験だったと思うのですが、なぜわざわざ「日本の大学教育における」というよくわからない限定をかけるのでしょうか・・・・・。
やはりTOEFLやIELTSでいいじゃん?と思います。
これじゃぁTOEICのSとWの試験を受けることと変わらない気が。
まぁ要するに「TOEFLやIELTSが難しすぎる人のための簡易TOEFL」なのでしょうか。

と思ったけど、文科省の資料によるとTOEFLの満点までと対応できるようだ(ほんまかいな)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/102_2/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/07/16/1349566_03.pdf

だとするとますますTOEFL(IELTS)でいいじゃねーかという気分が。

日本の文科行政は、TEAPという、日本英検・TOEICの続くような日本以外で通用しない試験をまた増やすことではなく、大学に行くような人が、TOEFLを受けることができるような英語教育環境を整備することではないでしょうか。
自分の子どもにはこんな意味不明な試験は受けさせたくないものです。TOEFLやIELTSを受けさせよう。
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2014年8月27日追記
http://blogos.com/article/93268/
” いま英語教育関係者の間で注目されているのが、欧州のCEFR(セファール)です。「外国語の学習・教授・評価のための欧州共通参照枠」(Common European Framework of Reference for Languages:Learning,teaching,assessment)のことで、初等中等教育(小・中・高校相当)の外国語の運用能力がA1 からC2まで6段階で示されています。たとえばA(基礎段階の言語使用者)2は日常的な範囲なら単純な情報交換に応じることができるレベル、B(自立した 言語使用者)2は専門分野などの抽象的な話題でも理解でき、英語を母語とする人とも普通にやり取りできるレベル……といったように、文章で基準が示されて います。各国のカリキュラムや教材などをCEFRと対照させれば、自分の国の英語教育が「欧州標準」でどこに該当するか、比較するための共通の物差しにな ります。地域統合を果たした欧州連合(EU)では、高等教育(大学など)を中心に各国の教育内容も標準化して互換性を持たせ、域内の自由な移動に備えよう という機運があり、その初中教育版と言うこともできます。”
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/shiryo/attach/__icsFiles/afieldfile/2014/08/06/1350353_01.pdf#page=5





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2015年7月21日追記
オックスブリッジの入試を突破する「英語力」の身につけ方
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41910

"どの英語試験がお勧めか?
前述の3つの試験のうち、以下の理由により私はIELTSでの受験をお勧めする。
①試験の規模
試 験頻度と試験会場へのアクセスは重要な考慮事項である。前述の試験を比べた場合、1年に5回未満しか開催されないケンブリッジ英語検定に比べ、IELTS とTOEFLの試験頻度は1ヵ月に2~3回程度と多い。また、試験会場も数が多く、比較的アクセスが良い場所にある。このため、ケンブリッジ英検と比較し てIELTSやTOEFLの方が受験しやすい試験といえよう。
②相対的にTOEFLの要求スコアが高い
両 校のTOEFL要求スコアはIELTSの要求スコアに比べて相対的に高いと感じる。例えば、MBA課程の場合、両校のTOEFL要求スコアは110点であ る。一方、IELTSの要求スコアは7.5である。TOEFLとIELTSを両方受けた経験からすると、個人的にはTOEFL 95~100点程度=IELTS Overall 7.0 (以下、7.0)、TOEFL 100~105点=IELTS 7.5、TOEFL 110点=IELTS 8.0という感覚である。
③IELTSは受験頻度に関する制限がない
2014年12月現在、TOEFLは受験頻度に制限がある。受験は12日間に一度に制限され、実質1ヵ月に3回以上受ける事は不可能だ。一方、IELTSには受験回数に制限がない。実際、私は出願直前に1ヵ月4回のペースで受験して目標スコアを達成した。
④米国の大学受験でも使えるIELTS
「IELTS は米国の大学院受験で使えるのか? 」と懸念される方はいるだろう。現在は米国の有名大学の多くもIELTSを採用している。このため、IELTS使用を許可しない一部プログラムを志望する 方を除き、米国の大学院を併願する方にもIELTSの選択をお勧めできる。実際、過去にIELTSでStanford MBAに合格した方を知っている

オックスブリッジのIELTS要求スコア
前述の通り、両校のIELTS要求スコアは7.5である。しかし、実際には例外がある。
例 えば、ケンブリッジの場合は、上記の要件を満たしていなくてもEnglish for Academic Purposes(以下、EAP)というサマープログラムに参加すれば入学が許可される。実際、MBA入学審査のサイトには、「IELTS7.0で応募し ていいが、条件付き合格になる可能性がある」という旨の記載がある 。この条件というのは合格後にIELTSのスコアを7.5に更新するか、大学が実施す る語学力審査の受験を指す。大学の専門機関による3時間程度の語学力審査を受け、ここで十分な英語力を示せばIELTS7.5未満でも入学が許可される。 仮にここで十分な英語力を示せない場合でも前述のEAPに参加する条件付きで入学が許可される。
また、オックスフォードの場合、学部入学の 場合はIELTS 7.0、大学院レベルの受験でも、MSc by Researchと呼ばれるResearch degreesの学位(例えばMSc by Research in Biochemistry)を取得するための修士課程であればIELTS 7.0で条件を満たせるようだ。
これらを勘案すると、IELTSスコアが7.0あればオックスブリッジに合格できる可能性が十分にあると考えていいと思う。その一例として、私はケンブリッジ修士課程にIELTS7.0で合格し、その後に語学審査を通過して入学している。"

” ここまでにふれた勉強はあくまで試験に合格するためのものである。IELTS7.0は合格するための英語力の最低基準値であり、卒業するために十分とはい えない。このため、私はさらに英語力をつけるという目的で前述のEAPに参加し、ライティングとスピーキングを中心にスキルを磨いた。最低スコアを取得し た後は是非様々な英語の勉強にトライしてほしい。”

コピペはしないけど、TOEIC800を超えるくらいまでは、IELTSのことは忘れてまずはTOEICを勉強しようと書いてあった。
確かにそれいい方法かもしれないなと思いました。


ちなみに私は大学院(MPH)でのお勉強も考えていたので、渡米前にIELTS7.0は確保しておりました。
HSPHはじめ多くの世界中のMPHがだいたい7.0以上となっております。
しかし現実は、上記で書いてあるように、これは「最低限のスコア」だと思いました。まさにrequirementだと思います。
つまり、それ未満では、まさに「お話にならない(支障がある、教える方も困る)」、という意味だと思います。

&日常生活での会話で求められるスキルは、IELTSやTOEFLとはまた別の能力ですね。


英国の修士課程で緩和ケアを学んで
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03096_02

" 英国の大学院に入学するには,IELTS,TOEFL,ケンブリッジ英検のいずれかで,基準スコアへの到達が条件になることが多い。最初から英国への留学 がわかっている場合には,IELTSの受験をお勧めする。私は,英語学校のIELTS対策コースや英国大学院留学専門の準備学校に通うことにしたが,さま ざまな背景を持つクラスメートと共に学ぶことができたのは大きな収穫だった。"


3 Things International Students Should Know About the IELTS Exam
http://www.usnews.com/education/best-global-universities/articles/2015/04/23/3-things-international-students-should-know-about-the-ielts-exam

いわゆる津田論文(福島県の18歳以下における甲状腺がん発見について検討した論文)についての考察メモ

Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26441345
Epidemiology. 2015 Oct 5. [Epub ahead of print]

この件に関して始めに表明しておくと、私としては、政治的思想については、ニュートラルな立場のつもりです(私は東電の株も持っていないし、知り合いもいません。また福島県立医大や福島県からお金をもらったりもしていません。友人はいますが)。

科学者、特に疫学者として、気になったのは、以下の文章です。conclusionでも同様の記載があります。

(原文:However, the magnitude of the IRRs was too large to be explained only by this bias)
"external comparisonでのリスク上昇はactive surveillanceでは説明するにはtoo largeである"

個人的には、この一文は、REFもなく、著者(ら)の主張(主観、想い)ありきの一文で、明らかに一線を越えた言い過ぎ(=結論ありき。)ではないかとに思えました。


私なら、以下でも議論されているような
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150630

NEJMの韓国のactive screeningによる情報の程度の論文をREFして


「福島でのincidenceの見かけ上の増加は、screeningによる影響が大きそうだ。しかしそれですべて説明できるかは、適切な比較がない以上誰にもわからないだろう。」

と結論付けたいです。

この韓国の論文では、甲状腺のactive screeningを開始して、死亡率が変わらず、甲状腺がんのincidenceが30倍程度増えました。
この結果を解釈すれば

「mortalityに影響しないlatent cancerを不必要に見つけているだけである」

と思われます。
つまり、集団で見た時の増加分は、「不要な発見」(いわゆるやっている意味はない)と言えると思います。
その増加が、今回の福島のexternal comparisonとの比較の数字と(私には)同じ程度(or 差はさほどない)に思えます。
(まぁ結局、差があるかどうかの判断は、どこまで行っても主観からは逃げられないわけですが)
それはつまり、被爆の影響では甲状腺がんは増えていない、のではないかでしょうか。


掲載されているのがpublic healthの雑誌ではなく、疫学の雑誌なのでpolicy implicationはなじまないかもしれませんが、policy implicationとしては、私なら、

「active screeningの妥当性はわからない。大切なのは、患者の希望に合わせて、対応すること。発生した甲状腺がんすべてについて国が保障することだろう。」

などと締めくくりたいかなと思います。

この問題は答えが出ない問題なので、科学者は謙虚になるべきだと思います。

私のこの件についての解釈をまとめると以下です。

1)今回の被曝とがんの影響はどこまで行っても不明だろう(比較する適切なコントロールが存在しないので論理的に比較は無理)。
また、仮に適切なコントロール群があり適切に比較検討できたにしても、わかることは集団レベルとしての原発の寄与割合がわかるだけで、個人レベルでの原発の寄与はわからない=Aさんの甲状腺がんは原発のせいで、Bさんのは原発ではない、などとはわからない。

2)現実、福島で困っている・不安に思っている人はたくさんいる(おおむね被害者と言ってもよい?。ここらへんも議論はあるでしょう。)。

3)東電は私企業とはいえ、実質独占企業(≒国営企業的)である。また原発推進は国の政策でもあった。

4)一般に、自然災害の被害は、国全体で保険するようなものである(例:自衛隊によるレスキューはいい例でしょう)。


以上の1-4により、甲状腺がん関係の対応(相談・検査・治療などのコスト)は、国全体でカヴァーされるべきではないでしょうかね。
これは福島に限らず、今後日本のほかの地域で生じた場合も同様と思います。


一方で、「わからないことに関して、皆のお金は使わない」という立場も「謙虚」になるのかもしれませんね。
これは、リバタリアン的な正義の考えないのでしょうが、おそらく日本人にはフィットしないでしょうね。
私の理解している日本人的な考えは、「まぁわかんないけど大変だからみんなで助け合おうよ」なんだと思います。

まぁどちらも「正解」ではないと思います。
結局、最後は、政治判断になるのでしょう。
そして現実社会では、福島の医療費(の自己負担分)は、期間を区切って、当時の居住地域によっては無料に、というのが政治判断となりました(=国が面倒を見ることにしました)。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/fukushima/cat080/6921-119267#kikanentixyou

しかし震災後約5年が経過し、徐々に、所得が多い人から、自己負担は復活してきているようです(これは福島に限らずほかの被災地における医療費自己負担免除も同様です)。

この調子だと、おそらく数年以内(今から5年もたたないうちに=震災から10年以内に)に、他の日本国民と同じになるのではないかと思います。

もし、被爆による甲状腺がんの発生が、これから起こるとなると、その医療費(の自己負担)は、自己負担となるわけですね。

邪推ですが、その医療費を含めた責任問題について、国と東電を相手に民事訴訟が起きそうな気がします。。。

研究という面から議論すると、被曝と甲状腺がん発生の間の検討をしやすい環境ではないと思います(データの取得について)

原発事故後の放射線漏れによる健康被害の検討は、当たり前ですが、どこでもできるわけではありません。

前例はチェルノブイリくらいですが、当時は情報も適切に評価・公開されていないです。

今回の福島は、高い精度でその関連を検討して、記録に残すことが、日本にとどまらず全世界的に人類のためになるんじゃないかなーと、災害直後から思っていました。

が、残念ながら難しそうだなーと思う今日この頃です。

exposureのアセスメントが早急にできなかったので、その様な状況では、結局今後何をやろうが、関連はよくわからない気がします。

セカンドベストは、今回の津田論文のように、当時の居住地ベースでの、甲状腺がんの発生の検討になるのかもしれませんが、因果については難しいなぁと思います。


と思っていたら、当の福島県立医大から、この論文はおかしい!というお手紙が届いたようです。


津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました

2016年2月 5日

http://fukushima-mimamori.jp/news/2016/02/000248.html

上記の指摘内容は、私の上記の内容とは視点が異なるようです。個人的には、??な内容だと思いました。
 
以下のようなことが書いてあります。

”なお、甲状腺がんが健診で発見される状態になってからどれだけの期間が経過すれば、臨床症状が出て発見されるようになるのか(=潜伏期間)、については、まだ多くのことがわかっておらず、今後更なる研究が必要であると考えております。”

上記のような記載を読むと、じゃぁもう何年か待てば、因果関係に結論を出してくれるのか?という期待を持ってしまうような文章ではないかと思いますが、個人的には上記にも書いた通り、この問題については、いつまでも結論は出ないと思います。

政治もそうですが、わからないことは、わからないということも大切ではないでしょうかねぇ。

勘違いする人もいそうなので明記しますが、わからない、ということは、見放すことではありません。

「わからないけど、困っている人・心配している人には対応します」ではないかと。